ん、誰か呼んだ?


by zo-shigaya

キャラバンは進む

《犬は吠える、がキャラバンは進む》

「あれはたしか1950年か51年の春だったと思う、・・・2月の暖かい日であった。シチリアでは春の盛りであった、私はひじょうに年をとったある人と話をしていた。その人はモンゴル系の顔に黒いビロードのポルサリー丿をかぶり、アーモンドの花の香りに満ちた季節であるにもかかわらず厚い黒いケープをはおっていた。その老人はアンドレ・ジッドであった、2人は護岸に腰をおろし、揺れ動く青い炎のような古代の海を見おろしていた。
(・・・郵便配達人が手紙を手渡して行ったがその中に私への悪意をこめた批評文を同封したものがあった)
 その批評について、また批評精神一般の不健全性について、私が文句を言うのを聞き終わると、フランスの大文豪は背を丸め、肩を落とし、まるで賢明な老いたる・・・禿鷹のように、と言っていいだろうか?・・・そんな顔つきで言った、「ま、いいじゃないか。アラブにこういう諺がある、覚えておくんだな。《犬は吠える、がキャラバンは進む》」

 トルーマン・カポーテイ 『犬は吠える』(「ローカルカラー」所収)

 メデア・ファシズムの嵐の中で精神の安定を得るためのおまじない。
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by zo-shigaya | 2010-06-10 10:56