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ん、誰か呼んだ?


by zo-shigaya

文士の魂

 2月26日木曜日の午後8時過ぎ、たまたまNHKラジオを点けたら、ホキ徳田さんが自叙伝を話していた。
僕にとっては、ヘンリー、ー・ミラーとの出会いの事に興味があるので、しばらく聞いていた。

 彼女と出会ったのは、ミラーが70歳ころのことであるが、一緒に住んでみて驚いたのは、物が全然なかった、という。
 ワードローブには、正装用の背広が一着と、あとは普段着の服が3,4着ぶらさがっていただけだったという。
 家具も調度品もこれといったものはなくて、あの大作家が、と驚いたという。
 ミラーの金銭感覚は第二次大戦の前で止まっていて、徳田さんが付けていた香水の値段を聞いて、驚いたという。何十ドル、というあたりが、高額、という感じだったらしい。
 贅沢品などを身に付けるという気持ちもなく、「ホキ、君が僕にとって、一番のラクジュアリーだよ」と言ったという。

 ヘンリー・ミラーの「南回帰線」は中学生の3年の3学期の春休み、つまり高校生になる直前の、私が最も影響を受けた本だ。おそらくその本の影響が、僕のその後の人生のなかの、男女のつきあいについて、最も大きく影響したといえる。
 田舎の本屋に並んでいたものではなく、その春休みに東京神田の三省堂か東京堂か、で平積みされていたのを買った。

 この本の影響の延長上に、W・ライヒの「セクシュアル・レボリューション」や「オルガスムの機能」があり、日本の68年ムーブメントへのコミットメントがある。
 それはさておき、
 徳田さんの話を聞いて、からだの底から湧きあがる感動がある。
 天下無一物の存在として、自在闊達に動き回る、文士の魂の尊さ。
 このごろ、絶えて聞かない。

 それこそ、若い魂を惹きつける核心。

 いい話を聞かせてもらった。
by zo-shigaya | 2009-02-28 12:03 | 近時片々